2011年9月8日木曜日

しあわせを運ぶ舟 2010.11.10

 秋深まる先日、家族でまたまた近くのヘイクボにでかけた。今回はいつもと違う山道を歩いたが、その下り道、幸運を呼ぶと言う、けさらんぱさらんを見つけた。とはいえ、このけさぱさは正体不明ではなくガガイモという蔓植物の綿毛だと知っているので辺りを見回すと、すぐ脇の灌木に,本体があった。サヤの形は特徴的な少し角張った紡錘形。じつはサヤが開く前の状態を見るのはnoomも今回初めてなのだった。少し黄緑も混じった奇麗なさやは、熟していると半分に割れているが、その中に,整然と種が格納されている。そっと種を引き出すと、瞬く間にふんわりした綿毛が開くのはとてもおもしろいので、たちまち子供たちに引き出されてしまった。秋の山道に、たくさんのけさぱさがフワフワと漂ってゆく。そして取り出したあとのサヤを見てtooが、「船みたいだね。」といった。たしかにそういわれればシーカヤックのように美しい形をしている。幸運を呼びこむためにも、まだ未熟なさやをいくつか家に持ち帰ってみた。
ところで前から「ガガイモ」って変わった名前と思っていたが、調べてみるとちょっとおもしろい。古名はカガミ、もしくはカガミグサというらしいが、なるほど、カガといえば蛇の古名。蔓であることやこのサヤの細長い形は蛇っぽいイメージがある。またあのけさぱさは印鑑用の朱肉に使われていたらしい。意外に人と関わりが深いんだなあ。そして特に興味をひいたのが日本書紀の中でスクナビコナが乗って来た船が天之蘿摩船(あまのかがみのふね)と呼ばれているが、これが「白斂の皮をもって舟となす」つまり「ガガイモの実を2つに割った小さな舟」のこと。とある。スクナビコナは非常に体の小さい神と言われているので、小さき舟のイメージが掻き立てられたのだろう。古代のプリミティブな感性とこどもの感性は同じだった訳だ。
またさらに脱線すればスクナビコナは「鵝(ひむし・蛾)の皮の服を着ている」ともある。ガの皮でできた服と言えば思い出すのはミノムシ。その蓑はとても丈夫なので、たくさん集めてチョッキを作ってみた人もいるとか。こちらもガガイモと同じように紡錘形で、内側がすべすべしているので関連づけられたのかもしれない。とすると、日本書紀のこの部分、今日のような晩秋の自然の中で物語が生まれ、語り継がれていたのかな、等と空想がふくらんだ。ともあれ、落ち葉降り積もる中で家族ゆっくり歩く秋のひとときは、それだけでとても幸せなのだった。

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